先日、靴修理におけるボンド・プライマーに関する知識を得るため、昴さん主催、中央樹脂ケミカルの新井さんのセミナーを受講してきました。
靴修理におけるボンドの接着は、塗れば接着できるというわけではありません。
まず、靴修理における接着とは?
アッパー素材と本底素材や、本底材とハーフソール・傾斜版など2つの素材を貼り合わせる際には必ず必要になってくる作業です。しかし靴修理の場合には、接着とは2つの素材同士が接着しているのではなく、それぞれの素材に塗布した接着剤同士が結合することを接着といいます。
靴修理の場合には詳細のわからない素材や、様々な状態にある素材(汚れや劣化など)、形状により圧着な素材などあらゆる状況下での接着が求められてきます。そこで上記のようなイメージをもつことで、接着後の剥離時や、接着不能な場合の原因追求に役立つのです。
そこでプライマーという下処理剤が重要になってきます。
プライマーとは?
ボンドだけでは接着が不十分、または全く接着ができない素材に対して接着性を向上させるためにボンドを塗る前に表面処理をする塗り剤
プライマーの選択は素材によってそれぞれ異なるため、素材の特徴を知る必要があります。
左からシャークソール(素材:合成ゴム)、ビブラムスポンジソール黒、白、茶、ベージュ(素材:EVA MORFLEX配合) 、ピンヒール赤白(素材:塩化ビニール)
天然クレープや合成ゴムはプライマーN100を塗布。
EVAやウレタンは一度表面を削ってからプライマーN100を塗布。
TRはプライマーN200を塗布。
塩化ビニールはプライマーN300とそれぞれにあったものを塗ります。
N200 とN300はシンナーで接着面の汚れを落としてから塗るとしっかり表面処理されます。
乾燥時間はどれも15分から30分ほど。
ここから実際にボンドを塗って接着する工程に入っていくわけですね。
ボンドも大きく分けてネオプレンボンドとグラフトボンド2種類あります。
ネオプレンボンド
修理業界で古くから普及している黄色のボンドで、ネオプレンゴムを主原料としています。ボンドN3000
グラフトボンド
ネオプレンゴムだけではカバーできない接着材料に対して接着可能にする為にアクリル素材を組み合わせたものです。ボンドN7000+
接着強度としてはどちらも強いのですが、タック粘着性(それぞれの素材に塗布した接着剤のシンナーがほぼ乾いた状態となり出てくる粘着性、熱活性をしなくともその粘着性によりそのまま圧着可能となる性能)はネオブレンボンドの方が強くなります。一方で接着可能素材は、グラフトボンドはほぼ全て接着が可能(プライマー併用)。
ネオプレンボンドは、即修理用
グラフトボンドは、預かり修理用
というイメージ。
シュプリでは保管靴が多いですので、接着を要する修理の場合には主にグラフトボンドN7000+とプライマーはN100,N200,N300の三種と使用しています。
少しマニアックなブログとなりましたが、このようなプロセスを踏んで修理・接着を行っていきます。少しでも読者のあなたに内容が伝わっていると幸いです。
昴の山本さんはじめスタッフの皆さん、ありがとうございました!